「世界で一番やさしい考え方の教科書」書評 - 考えることを体系化する

目次

「世界で一番やさしい考え方の教科書」書評 - 考えることを体系化する

はじめに

考えようとしても時間ばかりが過ぎてまとまらないと感じていて、解決のヒントになりそうな本書を読んでみました。結果として、考えることを【認知】【思考】【行動】のサイクルとして捉える新しい視点を得ることができました。

概要

本書は「考える」という行為を体系的に分解し、実践可能なプロセスとして提示しています。著者の榊巻亮氏は、考えることを認知・思考・行動の3つのサイクルとして定義し、それぞれに具体的な手法を提供しています。

各章の詳細

Chapter 1:認知 ― 考える土台を作る

この章では、考えることの第一歩として「認知」の重要性が説明されていました。認知を3つの側面から整理することで、思考の土台を作ります。

言葉の認知では、曖昧な言葉を具体的にすることの大切さを学びました。「改善したい」という言葉一つとっても、何を・どの程度改善したいのかを明確にしなければ、考えが前に進まないことがよく分かりました。

状況の認知では、事実と思い込みを区別することの重要性が強調されていました。主語と目的語を意識することで、認識のズレを防げるという指摘は実践的でした。

意図の認知では、言葉の背景にある意図を理解することの大切さを知りました。相手の言葉をそのまま受け取るのではなく、自分の言葉で確認することで、曖昧なまま流してしまったところに気付けるようになります。

思考 ― 道筋を立てて考える

思考の章では、「思考の4ステップ」という具体的な手法が提示されていました。頭の中のモヤモヤが整理できない原因は、脳内でオーバーフローしてしまうからだという説明に納得しました。

  1. 考えるべきことを書き出す(Thinkリスト)

    • 頭の中で出たことは全部書く
    • この段階では掘り下げない
  2. 考える順番を決める

    • 依存関係を整理する
    • 新たに考えるべきことが出たらリストに追加
  3. 答えを出す

    • 20点でよいから素早く仮説を立てる
    • ブラッシュアップはイテレーションで
  4. 理解を深める

    • 具体的に解像度を上げる
    • なぜを問い、論理を通す

特に「20点でよいから素早く」という考え方は、完璧主義に陥りがちな自分にとって大きな気づきでした。

行動 ― 思考を前に進める

思考に時間をかけてはならない、スピードが大事だという主張が印象的でした。時間がかかるのは思考が止まっているからで、思考が止まったら行動するという原則はシンプルで実践的です。

脳が考え続けられる時間は20分が限界という指摘も興味深く、ポモドーロテクニックとの共通点を感じました。行動の例として挙げられていた内容も実用的でした:

  • 人に相談する(採点ではなく、正解を求めない)
  • 壁打ちをする(相手は誰でもよい)
  • 情報収集(何が詰まっているかを理解してから)
  • 休む(思考の基礎ができている状態で)

洞察する ― 深みを与える

思考とは別に、あえて横道にそれることで脳の引き出しを増やす「洞察」について触れられていました。知識や経験を強化し、思考に深みを与えるための活動として紹介されています。

実務への応用

本書で学んだ思考の4ステップは、開発タスクの整理にそのまま応用できそうです。特に複雑な問題に直面したとき、まずThinkリストを作成し、依存関係を整理してから着手するという流れは、すぐにでも実践できます。

また、20分という時間制限を設けることで、無限に考え続けてしまう癖を改善できそうです。

良かった点

  • 抽象的になりがちな「考える」を具体的なプロセスに分解している
  • すぐに実践できる手法が豊富
  • 完璧を求めず、イテレーションで改善する考え方

改善を期待する点

  • 各手法の具体例がもう少し多いとより理解しやすかった
  • チーム単位での思考法についても触れてほしかった

おすすめ度

★★★★☆(4/5) - 考えることに時間がかかってしまう人、思考が堂々巡りしてしまう人に特におすすめです。プログラマーやエンジニアにとっても、問題解決のアプローチとして活用できる内容でした。

まとめ

「考えようとしても時間ばかりが過ぎてまとまらない」という当初の悩みに対して、明確な解決策を得ることができました。考えることを【認知】【思考】【行動】のサイクルとして捉え、それぞれに具体的な手法を適用することで、効率的に思考を進められるようになりそうです。

  • 認知:言葉・状況・意図の3つの側面から整理
  • 思考の4ステップ:Thinkリスト→順番決め→答えを出す→理解を深める
  • 20分ルール:脳が集中できる時間を意識した時間管理
  • 行動の選択肢:相談・壁打ち・情報収集・休憩